寄附講座「大学とスポーツ」

はじめに

関西学院大学体育会
元会長 根岸紳

私は2008年4月、体育会会長に就任した。
就任早々の6月、K.G.A.A.(関西学院大学体育会同窓倶楽部)主催の座談会の中に緊張しながら私は席に座った。初めてK.G.A.A.会長岩崎元彦氏(第8代会長)にお会いした。実は、座談会の前、すこし身構えていた。なぜなら、体育会をもっと強い集団にしたいのでスポーツ選抜入試をさらに強化してほしい、さらに試合の公欠を正式に認めてほしいといった要望がK.G.A.A.会長からあるのではないかと予想していたからである。しかし、座談会が始まるとその杞憂はすぐに消えたのである。岩崎氏ははじめに言われた、「卒業後の長い社会生活において、関学出身者として誇りを持ちながら活躍できる人材を育てたい。そのためには文武両道が必要である」と。私とまったく同じ考えであることがわかった。これが私の8年間続く体育会会長としての原点である。

そしてすぐに岩崎氏と親しくなり、さらに輪が広がりK.G.A.A.の役員の人たちと懇意になっていった。K.G.A.A.のみなさんと接するたびに、K.G.A.A.の関学に対する熱い思いがひしひしと伝わってきた。大学時代の思い出、そしてその後の人生について熱く語られた。この話を私だけに語ることで終わらせてはいけないと直感した。この語りをぜひとも現役の学生の前で話してほしい。体育会での経験がその後の人生においてどのように生かされていったのかを一般学生や体育会の学生たちに話してほしい、そして正式に単位の取れる科目にできないだろうか。体育会副会長であった木本圭一国際学部教授にこの思いを伝えたところ、すぐに賛成してくれ、そして彼の行動力のおかげでこの私の思いは実現していくのである。

岩崎氏を引き継がれた渡辺淳一氏(第9代K.G.A.A.会長)、横山瞭一氏(当時K.G.A.A.幹事長)、木本教授と私の4人が中心となって企画を練り、そしてついに2012年9月からK.G.A.A.寄附講座「大学とスポーツ」がスタートしたのである。1年生から履修ができ、2単位取得できる科目として認められたのである。その後、授業は継続し、体育会42部すべてそして応援団総部も含め講義を担当し、2019年度まで続いた。現在、しばらく不開講中であるが、また新しく生まれ変わり、寄附講座「大学とスポーツ」は続いていくであろう。

関学体育会のモットーはNOBLE STUBBORNNESS であるが、これはJohn Dryden(1631-1700)の詩の一節“Patriots, in Peace, assert the People Right; With NOBLE STUBBORNNESS resisting Might.”からとられたものである。「Nobleであれ、Stubbornであれ」、「高潔であれ、そして頑固であれ」と謳っている。この二つの言葉はやや対立する概念であるが、この二つの精神を基礎にそれを超える人間になれと体育会モットーは訴えている。またスクールモットーのMastery for Serviceは、「Masterになれ、Servantになれ」と謳っており、これも対立する概念である。MasterとServantを併せ持ちそれを超える人間になれと訴えている。体育会モットーもスクールモットーも、二つの要素をもちながら、それより上位のもっと大きな人間になれとわれわれを励ましてくれている。関学体育会で過ごした学生たちは、これら二つの崇高なモットーを両翼のように持ちながら、社会へ飛び立っていくのである。実に心強いものとなっている。私は5年間、講義を拝聴しながら、K.G.A.A.のみなさんが常に二つのモットーを胸にいだきながら人生を歩んでこられたことを、確信をもって、感じたのである。

講義録(講義年度順)

寄附講座シラバス 2012年2013年2014年2015年2016年

講義年度 タイトル 執筆者名 クラブ名 卒年
2012 サッカーの歴史とアマチュアスポーツ 八木 春作 サッカー部 S42
2012 ラグビーについて 渡辺 淳一 ラグビー部 S41
2012 学生スポーツが目指す道 宮脇 貢 ボクシング部 S62
2012 ボクシングの歴史 寺山 正道 ボクシング部 S42
2012 オリンピックと日本レスリング(スポーツを通じて得るもの) 横山 瞭一 レスリング部 S42
2012 ボート競技とマスタリーフォーサービス ーボートにスターは生まれないー 北村 良蔵 ボート部 S38
2012 モンゴルは何故格闘技が強いのか? 中川 達治 柔道部 S41
2012 高専柔道大会と関学 上野 勝
(物故者)
柔道部 S43
2013 庭球部100年を支えた「ノーブル・スタボーネス」 山口 章 庭球部 S46
2013 元スポーツ記者による野球考 大西 禧充
(物故者)
硬式野球部 S39
2013 関学相撲部と学生相撲の変遷について ー昨今及び今後のグローバル時代への対応を踏まえてー 石坪 昭宏 相撲部 S45
2013 お雇い外国人と近代登山 中井 祥雅
(物故者)
山岳部 S42
2013 アメリカンフットボールの本当の魅力 小野 宏 アメリカン
フットボール部
S59
2013 学生剣道と関学 神谷 明文 剣道部 S44
2013 関学のホッケーの現状と方針 上山 恒雄 陸上ホッケー部 S41
2013 競技カヌーと関学カヌー 植田 賢太郎 カヌー部 S39
2014 関西学院大学陸上競技部で部員とともに学んだこと 北井 敏雄 陸上競技部 S54
2014 アイスホッケー部の歴史 森田 憲治 アイスホッケー部 S45
2014 私の学生生活とハンドボール 久岡 敏博 ハンドボール部 S46
2014 私が空手道部から得た事、そして卒業後の空手道人生 前川 英博 空手道部 S40
2014 モ一タースポーツの先駆け Since 1933
~日本の自動車産業と共に歩んだ89年~
多田 義治 自動車部 S36
2014 ウェイトリフティングと生きた半世紀 中尾 美喜夫 重量挙部 S43
2014 An Eldery Wanderer, 我が足跡を振り返って・・・未来に翔るKG若人に贈る 南井 克之 ワンダー
フォーゲル部
S38
2015 スケート部の歴史について 岩島 直己 スケート部 S38
2015 関学、卓球部が受け継いできたもの 鯛中 昌洋 卓球部 H30
2015 帆船の歴史と近代オリンピック 網野 勝彦 ヨット部 S61
2015 バスケットボールの誕生と関学大バスケットボール部の歴史 ー伝統の灯りは消えていなかったー 小谷 茂秀 バスケット
ボール部
S51
2015 関学拳法部創部80年に思う、私と日本史、学院史、日本拳法史 森下 正之 拳法部 S40
2015 見るプロ、伝えるプロへ 宮田 匡二 準硬式野球部 S57
2015 バドミントン競技の歴史と最近の状況 小田 忠庸 バドミントン部 S47
2015 ゴルフの歴史と精神 栁田 隆久 ゴルフ部 S46
2015 応援団総部70年の歴史 濵口 宸也 応援団総部 S41
2016 正課外活動にいかに取り組むか ースキー競技の例からー 太田 啓示 スキー競技部 H24
2016 関西学院大学の在り方と水上競技部 内藤 俊夫 水上競技部 S61
2016 ソフトテニス・テニスの歴史とその他諸々 山下 二郎 ソフトテニス部 S62
2016 馬術の歴史と競技について 岡本 正義 馬術部 S49
2016 生涯スポーツを考える 白井 和彦 バレーボール部 S45
2016 体操の見どころ~体操競技とマイナー競技~ 平川 遼太郎 体操部 H20
2016 フェンシング競技の紹介とその歴史・関学フェンシング部の歴史と現況 竹安 清 フェンシング部 S39
2016 機長への道 杉本 守 航空部 S45
2016 射即人生(弓道を通じた課外教育) 西畑 資久 弓道部 S60
2016 ラクロス部の歴史 立花 司 ラクロス部 H12

講義録(クラブ順)

クラブ名 講義年度 タイトル 執筆者名 卒年
庭球部 2013 庭球部100年を支えた「ノーブル・スタボーネス」 山口 章 S46
硬式野球部 2013 元スポーツ記者による野球考 大西 禧充
(物故者)
S39
サッカー部 2012 サッカーの歴史とアマチュアスポーツ 八木 春作 S42
陸上競技部 2014 関西学院大学陸上競技部で部員とともに学んだこと 北井 敏雄 S54
ラグビー部 2012 ラグビーについて 渡辺 淳一  S41
相撲部 2013 関学相撲部と学生相撲の変遷について ー昨今及び今後のグローバル時代への対応を踏まえてー 石坪 昭宏 S45
ボクシング部 2012 学生スポーツが目指す道 宮脇 貢 S62
ボクシング部 2012 ボクシングの歴史 寺山 正道 S42
スキー競技部 2016 正課外活動にいかに取り組むか ースキー競技の例からー 太田 啓示 H24
アイスホッケー部 2014 アイスホッケー部の歴史 森田 憲治 S45
スケート部 2015 スケート部の歴史について 岩島 直己 S38
山岳部 2013 お雇い外国人と近代登山 中井 祥雅
(物故者)
S42
水上競技部 2016 関西学院大学の在り方と水上競技部 内藤 俊夫 S61
卓球部 2015 関学、卓球部が受け継いできたもの 鯛中 昌洋 H30
ソフトテニス部 2016 ソフトテニス・テニスの歴史とその他諸々 山下 二郎 S62
馬術部 2016 馬術の歴史と競技について 岡本 正義 S49
ヨット部 2015 帆船の歴史と近代オリンピック 網野 勝彦 S61
バレーボール部 2016 生涯スポーツを考える 白井 和彦 S45
バスケット
ボール部
2015 バスケットボールの誕生と関学大バスケットボール部の歴史 ー伝統の灯りは消えていなかったー 小谷 茂秀 S51
レスリング部 2012 オリンピックと日本レスリング(スポーツを通じて得るもの) 横山 瞭一 S42
アメリカン
フットボール部
2013 アメリカンフットボールの本当の魅力 小野 宏 S59
ハンドボール部 2014 私の学生生活とハンドボール 久岡 敏博 S46
拳法部 2015 関学拳法部創部80年に思う、私と日本史、学院史、日本拳法史 森下 正之 S40
体操部 2016 体操の見どころ~体操競技とマイナー競技~ 平川 遼太郎 H20
ボート部 2012 ボート競技とマスタリーフォーサービス ーボートにスターは生まれないー 北村 良蔵 S38
準硬式野球部 2015 見るプロ、伝えるプロへ 宮田 匡二 S57
空手道部 2014 私が空手道部から得た事、そして卒業後の空手道人生 前川 英博 S40
フェンシング部 2016 フェンシング競技の紹介とその歴史・関学フェンシング部の歴史と現況 竹安 清 S39
柔道部 2012 モンゴルは何故格闘技が強いのか? 中川 達治 S41
柔道部 2012 高専柔道大会と関学 上野 勝
(物故者)
S43
剣道部 2013 学生剣道と関学 神谷 明文 S44
バドミントン部 2015 バドミントン競技の歴史と最近の状況 小田 忠庸 S47
ゴルフ部 2015 ゴルフの歴史と精神 栁田 隆久 S46
航空部 2016 機長への道 杉本 守 S45
陸上ホッケー部 2013 関学のホッケーの現状と方針 上山 恒雄 S41
自動車部 2014 モ一タースポーツの先駆け Since 1933
~日本の自動車産業と共に歩んだ89年~
多田 義治 S36
弓道部 2016 射即人生(弓道を通じた課外教育) 西畑 資久 S60
重量挙部 2014 ウェイトリフティングと生きた半世紀 中尾 美喜夫 S43
ワンダー
フォーゲル部
2014 An Eldery Wanderer,
我が足跡を振り返って、、、未来に翔(かけ)るKG若人に贈る
南井 克之 S38
カヌー部 2013 競技カヌーと関学カヌー 植田 賢太郎 S39
ラクロス部 2016 ラクロス部の歴史 立花 司 H12
応援団総部 2015 応援団総部70年の歴史 濵口 宸也 S41

米田満先生直筆原稿

米田満先生原稿の清書

さて、本誌もいよいよ終盤に差しかかってきた。折もよし、関学スポーツは好況のうちに、こんな一日を迎えることができた。それは平成27年11月1日、恒例の覇業交歓の場に於ける痛烈な思い出である。いうまでもなく覇業交歓は年度最重要なる体育会イベントと位置づけられている。その日、ヒルの12時半に中央芝生に集合した体育会各会員は晴れがましくその場に列していた。根岸紳体育会長はこれまで類のないほど多数にのぼる表彰者の一人ひとりに心をこめて表彰状を読み上げ賞杯を手渡していった。それは長時間にわたる労作業であると思われたが、根岸会長の誠実な対応は決してゆるむことなかった。体育会最古参の庭球部に始まり新鋭のラクロス部に至るまでの計43の運動部の一体感はみじんの揺るぎもなく、誠に立派なものであった。

このあと、祝辞を述べた体育会同窓倶楽部の渡辺淳一会長は「きょうの覇業交歓は、これまで最大最高のものである。男子、女子、団体、個人、全国制覇、関西制覇、その他、各種の表彰を含めて、その総数は95にのぼる」と声高らかに誇らかに宣言した。あと、体育会総員の勝利のどよめきは中央芝生の隅々にまで拡がっていった。
この関学スポーツ快進撃の原動力となったのは関学体育会と関学体育会同窓倶楽部の密接な協力関係にある。そしてその実相は平成12年秋学期から根岸体育会長が立ち上げた「寄附講座の開講」である。これは体育会に関する教職員と体育会同窓倶楽部によるスポーツに関する講座がオフィシャルな授業として開講されたものであり、講座を終了した学生は単位が取得できる他に例を見ないユニークな取組である。命名の由来は授業の対価が学院へ寄附されるところに起因している。

この根岸会長の発意を受けとめるべく、あとに渡辺同窓倶楽部会長が全OBにフレを出して大車輪の働きをみせる。各運動部はそれぞれ各スポーツの歴史に触れ、自チームの歴史の伝統を深く振り返って懸命であった。核となった講義担当者はそれぞれ立派にその職責を果たしたと感謝申し上げたい。

あとがき

関西学院大学体育会同窓倶楽部
前会長 栁田隆久

K.G.A.A.寄附講座「大学とスポーツ」は、体育会42俱楽部並びに応援団総部のOB・OGをゲストスピーカー(講師)とし、2012年秋学期から大学の正課授業としてスタートしました。2016年1月、この講座開講に大変ご尽力くださいました体育会元会長根岸紳先生のご退職記念として、その講演内容を製本化して一般公開する企画を立ち上げました。教壇に立たれた各倶楽部講師の方々に原稿の執筆をお願いし、当初、計画は順調に推移しておりましたが、諸般の事情によりこの度、出版ではなくK.G.A.A.ホームページに掲載する形をとることになりました。

ホームページ掲載に際しまして、改めて歴代関学体育会の先生方には長期間にわたり御懇切なご指導を賜り厚くお礼申し上げます。また、講師の方々には講義に備えて長期間にわたる準備や当日までの健康管理など、目に見えないご苦労をいただいたことと感謝申し上げます。体育会員だけでなく、一般学生も対象に正規の授業として関学生としてのあるべき姿や精神、社会人としての心がけ等々、ご自身の実体験を混えた有意義な講義は彼らのこれからの人生に少なからず影響を与えることになったことと思います。私自身も出身倶楽部OB会の講師として一端を担うことができ、忘れがたい貴重な体験をさせていただきました。おそらく、多くの倶楽部の講師の中にも同様の感想を持たれた方々もおられるのではないでしょうか。

その後、原稿は多くの皆様のご支援により出版用、そして中断をはさんでホームページ用にまとめ上げられ、今回の掲載に至りました。第1回講義開講(2012年9月)から数えて足掛け10年、本当に長い道のりでした。お陰様で同窓から現役学生に語られた精神を学内だけにとどまらず、世に問うことが出来たことが感慨深く、大きな意義を感じております。同時にそのことが同窓と現役学生とを結ぶ、更に強い絆になれば望外の喜びであります。

最後に、このような素晴らしい機会を私共体育会同窓倶楽部(K.G.A.A.)に与えてくださいました大学当局に対しまして心からの御礼を申し上げます。 ありがとうございました。

編集後記

Ⅰ 関西学院大学体育会同窓倶楽部寄附講座「大学とスポーツ」の講義内容の公開について

2012年度から始まった関西学院大学体育会同窓倶楽部(K.G.A.A.)寄附講座「大学とスポーツ」は他大学に例を見ない、関西学院大学独自の取り組みです。体育会に所属する学生だけでなく、一般の学生が受講する魅力のある講座となっています。
その講座の目的は
・大学スポーツという切り口で、日本の大学の歴史や関学の歴史について考察する。
・スポーツのルールや応援について学ぶことによって、スポーツに関する教養を身につけ、
「観るスポーツ」、「参加するスポーツ」への積極的なかかわり方を学ぶ。
・大学スポーツの人気と広報のありかたについても考察し,大学とスポーツの在り方を考える。
・体育会同窓生の生き方を学ぶことによって、大学生活の在り方や卒業後の人生の指針を得る。
以上の4つであり、さらに、この講座の到達目標は
・大学スポーツの歴史を学ぶことによって、日本の大学ならびに関学の歴史を多面的にみることができるようになる。
・スポーツに関する幅広い教養を身に着け、今後その教養を活かしながら,スポーツを観戦することができるようになる。
・大学の中での正課外教育の重要性を理解することができるようになる。
です。

この講座の趣旨やその講義内容を社会に広めるため、そして関西学院大学全体のプレゼンスを高める意図から、当初、書籍として出版することが企画されました。ゲストスピーカーの講義をベースに執筆された原稿を書籍として2017年3月末に出版する予定で編集作業が行われていましたが、予定通り進まず、加えて新型コロナ感染症の影響もあり、出版について新たな編集方針を立てざるを得なくなりました。

2021年9月に改めて編集委員会を立ち上げ、出版計画について見直しを行い、新しい方針としてK.G.A.A.寄附講座「大学とスポーツ」において講義された各クラブのゲストスピーカーとなって頂いたOB・OGによる講義と学生への熱いメッセージをできるだけ早く、広く社会に届けるため、書籍出版という形から電子媒体を利用してK.G.A.A.のホームページに掲載する形へと変更することに致しました。そのため、執筆時点はおおよそ2016年度でしたが、公開まで6年近く経過しております。したがって、講義内容やデータ等もその時点(あるいは、それ以前)であることをご理解して頂けると幸甚です。なお、公開に際しては、講義内容と学生へのメッセージ、及び掲載写真の肖像権など各種権利の確認が整ったクラブから順次掲載していく予定です。また、各執筆者の意図を尊重し、編集委員会では受け取った原稿を原則、そのままの形で掲載することにしました。したがいまして、各クラブによってさまざまな書式となっていると思います。各クラブの原稿はゲストスピーカーの講義における話に基づいている文章なので、あえて書式を統一化してしまうと、ゲストスピーカー(執筆者)の思いが伝わりにくくなると考えました。また、そのままにすることで各執筆者の個性や所属するクラブの特徴が表現できるのではないかと思います。

Ⅱ 故米田満先生の原稿について

米田満先生は2020年8月、天国に召されました。関西学院大学体育会の礎を築いた方であり、寄附講座へもしばしば、講師としてご参加されておられました。

さて、もともと、米田先生によって関学スポーツ史話「原田の森」篇が刊行され、続篇の「上ケ原」篇の編集にあたり、各クラブから歴史秘話の原稿が集められたものの、米田先生の健康上の理由などから、「上ケ原」篇は日の目を見ていないと伺っています。編集委員会では、生前、米田先生から次の3点の原稿を預かっておりました。

①原稿タイトル「神戸原田の森から上ヶ原へ~関学スポーツ百二十五年の歩み~」
平成8年4月発行 定年退職記念『関西学院とともに』
②原稿タイトルなし、直筆原稿写真
③原稿タイトル「”Noble Stubbornness”のスローガン~大正時代の関西学院庭球部抄史~」
1996年3月発行 論攷『スポーツ科学・健康科学』ⅩⅢ号

当初の書籍出版計画では、この「上ケ原」篇のまとめに相当する米田先生の原稿を盛り込もうということになっておりました。しかし、今回、ホームページでの公開という形に変更になったことを踏まえ、①や③はすでに活字として公開されたものであり、改めてホームページに再掲するよりも、関学スポーツについて書かれた生前最期の未公開の手書きの原稿を多くの方にご覧になって頂くことを編集委員会として選択いたしました。もちろん、唐突の感は否めませんが、米田先生が「関学スポーツ通史」の編集後記として締めくくる文章であったと思います。その点で、公開するに値する貴重な原稿であると考えております。


   

編集委員会(カッコ内の役職名は2022年度のものです)
委員長  根岸 紳(元体育会会長)
副委員長 栁田隆久(K.G.A.A.前会長)
委員   岡田太志(前体育会会長)
     利光 強(体育会会長)
     元木雄三(K.G.A.A.会長)
     北村公一(K.G.A.A.副会長)
事務局  長沼加代子(K.G.A.A.幹事長)